外傷とその後遺症(瘢痕、瘢痕拘縮、肥厚性瘢痕、ケロイド)
1)きず
新鮮なきずをいかに速やかに治癒させるかというのは形成外科のメインテーマの一つです。
刃物などで切った切創、釘や針などで刺した刺創、鈍的な外力で受傷した挫創、皮膚などが強力な外力で剥がされた剥脱創、犬・猫などに噛まれた咬創などがあり、それぞれのきずの特徴を熟知し、適切な処置を行う必要があります。
2)やけど
やけどは小範囲のものから広範囲の重症熱傷まで形成外科の治療対象です。当院では広範囲の生命に関わる重症熱傷は救命救急科と共同で治療にあたっています。
小範囲のものであっても、その深さによっては皮膚移植術を行う必要がある場合があります。
当科ではやけどの初期治療から治癒後のリハビリテーション、肥厚性瘢痕・ケロイドの発生予防、瘢痕拘縮(ひきつれ)の治療まで総合的に行っています。
3)手・足のけが
手・足の外傷は小さなきずから腱や神経の損傷、手指や腕の切断の再接着まで形成外科の診療対象です。
形成外科ではマイクロサージャリーの技術を駆使して細かな神経や血管を吻合することで可能な限り受傷前の状態の復元を試みます。
4)顔面のけが
顔面の外傷についても小さな傷から顔面骨骨折まで診療対象としています。形成外科では真皮縫合という特殊な技術で皮膚を縫合しますのできずあとを非常に目立ちにくくすることが可能です。
5)きずあと
外傷の後遺症はきずあと(瘢痕)、ひきつれ(瘢痕拘縮)、ケロイド(肥厚性瘢痕・ケロイド)などがあります。形成外科で治療を行った新鮮なきずはその発生の予防に努め、適切な処置を行います。
他の医療機関で治療を受けたきずあとについても形成外科で治療を行うことができます。肥厚性瘢痕やケロイドは手術を行うと再発の危険性が高く注意が必要ですが、当院では放射線科と共同で手術後の電子線照射療法を行っています。
褥瘡、難治性潰瘍
褥瘡や長期間治らない難治性の潰瘍も形成外科の診療対象です。毎週月曜日午後に褥瘡外来を行い専門的な治療を行っています。
褥瘡は基本的に日常生活での発症予防と自己管理方法を指導していますが、手術により早期の治癒が可能な場合もあります。
難治性潰瘍は創傷治癒に関する最新の知見に基づいた専門的な治療を行っています。他の医療機関で様々な治療を試みても治らないような潰瘍も治療の対象とします。
先天異常
生まれつきの体表面の形態異常を診療対象とします。代表的なものは下記のようなものです。
1)唇裂・口蓋裂
口唇が生まれつき割れている唇裂と口蓋が割れている口蓋裂は形成外科で治療します。
唇裂のみの場合は当科で体重が6kg程度に成長した時点で手術を行い閉鎖します。
口蓋裂は形成外科で閉鎖するのみでなく言語治療、歯科矯正治療などを行う専門医とのチーム医療が必須であり、成長に伴う顎発育の長期経過観察も必要です。
当科ではこれらの条件を満たしたチーム医療を行い得る専門医療機関(東京女子医科大学)と共同で治療に当たっています。
2)手・足の先天異常
手指・足趾の形態の生まれつきの異常は形成外科で治療します。代表的なものに多合指・趾症がありますが、まれに染色体異常症の部分症であることがありますので小児科と共同で治療にあたる場合もあります。
3)耳介の先天異常
耳介の先天異常としては小耳症、埋没耳、袋耳、スタール耳、耳垂裂、立耳、副耳、耳部瘻孔などがあります。いずれも形成外科で治療を行います。
特に小耳症は長期間にわたる計画的な治療により耳介の再建術を行う必要があります。
4)体幹の先天異常
代表的なものに生まれつき前胸部が陥凹している漏斗胸があります。
治療法としては胸骨挙上法とペクタス・バー法があります。後者は漏斗胸治療のために特別に作成された矯正具(ペクタス・バー)を胸骨下に挿入することで、前胸部に大きな傷をつけづに漏斗胸を矯正する方法です。当科では当院小児外科と共同で本法を行っています。
皮膚軟部組織の腫瘍
形成外科では皮膚・軟部組織の良性・悪性腫瘍を診療対象としています。特に皮膚の悪性腫瘍は切除後に広範な皮膚欠損を生じますので、その再建手術が必要です。
形成外科では植皮術、局所皮弁作成術、遊離皮弁移植術などの方法を駆使して、欠損の被覆を行うのみでなく可能な限り元の形態の再現に努めます。
癌切除後の再建
皮膚癌以外の癌(乳癌、食道癌、咽頭癌など)が他科で切除された後の形態的・機能的再建手術を行います。
診療実績
平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | |
入院手術 | 219 | 242 | 231 |
全身麻酔 | 195 | 212 | 218 |
腰麻・伝達麻酔 | 0 | 1 | 0 |
局所麻酔 | 24 | 29 | 13 |
外来手術 | |||
皮膚腫瘍摘出術(露出部) | 210 | 204 | 195 |
皮膚腫瘍摘出術(露出外) | 85 | 101 | 113 |
皮膚切開 | 86 | 108 | 94 |