概要
三次救急患者を収容する救命救急センターのCCU部門(集中治療室)を運営し、24時間体制で急性心筋梗塞や急性心不全、不整脈などの重症救急患者を受け入れて、積極的な治療を行っています。
一方で、地域医療支援病院として地域医療の中核を担うべく、紹介患者様や救急患者様には当科独自の曜日担当制を敷き、他の慢性期患者様とは別に迅速な対応ができるように心掛けています。また、日本循環器学会指定専門医研修施設として若手の専修医の教育・指導にもあたっています。
循環器科、集中治療科の特色
循環器科・集中治療科では、第一の特色として、集中治療室を管理し、循環器緊急疾患に24時間対応しています。また、市内の病院、川口市消防局、川口市とともに川口CCUネットワークを構築し、地域の循環器疾患の早期受け入れの一翼を担っています。
さらにもう一つの特色としては、心臓超音波、心臓MRI、心臓冠動脈CT、心筋シンチグラムをはじめとした心臓モダリティを駆使し、虚血性心疾患はもとより、各種心筋症などの診断・診療に役立てています。
一方、近年増加している心房細動や、その他の不整脈に対するカテーテルアブレーションを多く行っており、新たに不整脈専門医研修施設の認定を受けています。
他科との連携
当科は総合病院の特性を生かして他科と連携し、多臓器疾患を合併した循環器疾患の包括的な治療を積極的に行っています。
心臓外科
2017年度より心臓外科が開設され、心不全の原因となる心臓弁膜症や重篤な狭心症・心筋梗塞などの心臓血管疾患の外科的加療も可能となりました。集中治療室の患者様については毎朝、カンファレンスを行い、迅速かつ適切な治療方針を検討しています。また、外科的治療が必要な患者様に迅速な対応を提供することができます。
救命救急センター
当院救命救急センターでは、超重症疾患をはじめとした三次救急に対応しており、その中には院外心肺停止患者も含まれます。心肺停止の原因は様々ですが、心臓が原因と考えられる心肺停止患者に対して、Extracorporeal CPR (ECPR; 体外循環を用いた心肺蘇生法)や低体温療法、冠動脈再灌流療法も適応があれば、積極的に施行しています。
脳神経外科
当院は、日本脳卒中学会より一次脳卒中センターに認定されており、24時間365日、脳卒中患者を受け入れています。脳卒中の中でも、心房細動が原因で発症する心原性脳塞栓は重症度が高く、脳卒中への治療はもとより、原因である心房細動に対しても治療が必要となります。また、動脈硬化が基盤にあることも多く、狭心症や心筋梗塞が合併している症例も散見されます。当院では、そのような患者様に対応すべく、毎週水曜日に合同カンファレンスを行い、入院中もしくは退院以降の当科的な治療を迅速に行えるように努めています。
皮膚科・形成外科・糖尿病内科・腎臓内科
近年、下肢閉塞性動脈硬化症が増加しています。当科としても、積極的に下肢インターベンションを行うことで血流の改善を図っていますが、原因は糖尿病や高血圧、喫煙などの動脈硬化であり、残念ながら繰り返してしまうことが多いのが現状です。重症化すると足や指先に潰瘍ができてしまい、最悪下肢切断が必要になってしまうケースもあります。当院では、可能な限り救趾率を上げるため、各科と緊密に連携を取りながらフットケアを行っています。
循環器科、集中治療科が扱う主な病気
狭心症、心筋梗塞、心房細動などの不整脈一般、心不全、心筋症、下肢閉塞性動脈硬化症など。
診療内容
救急心血管治療 (急性心筋梗塞・重症心不全・急性大動脈解離)
当科では、救命救急センターのCCU部門として、従来のCoronary Care Unitに限らず、Cardiovascular Care Unit (心血管集中治療室)として、急性心筋梗塞、重症心不全、急性大動脈解離に対して加療を行っています。川口CCUネットワークに参画し、24時間対応可能なシステムを構築しています。
特に、当院の特徴として、院外心臓性心肺停止患者に対する蘇生後の治療があげられます。院外心停止の症例についてはその6割が心臓性心停止といわれており、その2/3は急性心筋梗塞が原因といわれています。そこで、当科では、従来の急性心筋梗塞に対する冠動脈インターベンションに加え、自己心拍が再開していない心臓性心停止患者に対するECPR(体外循環を用いた心肺蘇生法)として、経皮的心肺補助装置(PCPS, VA ECMO)と低体温療法を併用した先進的な蘇生法についても取り組んでいます。院外心停止も含んだ急性冠症候群(急性心筋梗塞と不安定狭心症)に対しては、入院後直ちに冠動脈インターベンションを施行し、できるだけ早期の冠動脈の血行再建を目指しています。その結果、緊急冠動脈インターベンションの再灌流成功率は97.8%、急性心筋梗塞の院内死亡率は6%以下です。
心房細動に対するカテーテルアブレーション
脈がバラバラになったり、早くなったりすることを不整脈といいます。不整脈には色々な種類がありますが、注意する不整脈の一つに心房細動があります。
心房細動は、肥満や高血圧などの生活習慣病が原因で発症することもありますが、高齢になればなるほどその頻度は増加し、広く一般的に認められる不整脈です。動悸や息切れなどの症状を自覚し、医療機関を受診することで発見されることもありますが、約半数の人はほとんど症状がありません。
しかし、放っておくと治らなくなるばかりでなく、将来的に心不全や脳梗塞などの重大な合併症を起こすことがあります。治療としては、内服による薬物治療と、カテーテルによる非薬物治療(カテーテルアブレーション)があります。
薬物治療は以前より行われていた治療ですが、薬剤抵抗性の場合や、薬剤の副作用などが懸念されます。カテーテルアブレーションは、不整脈の原因となる、心臓の異常電気信号を焼き切る治療であり、現在唯一根治できる可能性がある治療方法です。
近年、多く行われるようになっており、内服薬を減量もしくは中止できる可能性もあります。最近の研究結果では心不全や脳梗塞のリスクを下げる可能性も指摘されており、患者様一人一人の病態や希望に合わせて治療方針を決めていきます。
冠動脈・下肢動脈に対する血管内治療(カテーテルインターベンション)
心臓から全身に血液や酸素を送るために必要な血管を動脈といいます。この動脈にコレステロールなどがたまり、血管の狭窄、もしくは、閉塞が起こる状態のことを動脈硬化といいます。この動脈硬化が心臓の血管(冠動脈)に生じると、狭心症や心筋梗塞となり、脳への血管に生じると脳梗塞、足の血管に生じると、下肢閉塞性動脈硬化症といい、いのちに関わるような重篤な病気を引き起こす原因となります。
このような動脈硬化症の予防としては、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などのいわゆる生活習慣病に注意することが必要となります。健康診断などの結果を医師に相談し、生活習慣病を予防・治療することにより、動脈硬化を防ぐことも可能となります。
動脈硬化症のなかで、首の血管(頸動脈)や脳血管に生じたもの以外は、循環器科の領域となります。当科では、動脈硬化症が疑われた患者様について、CT、 MRI、 心筋シンチなど非侵襲的なマルチモダリティーを用いてその病変を評価し、必要があればカテーテル検査、治療を行っています。
徐脈性不整脈へのペースメーカ移植術
心臓は電気信号が順序立って心筋に流れることで、リズムよく動いています。電気信号が十分に出なくなってしまったり、電気信号の伝達が滞ったりすると、脈が遅くなってしまいます(徐脈)。原因に対する治療で徐脈が改善することもありますが、原因が不明な場合や、治療が困難な時は脈を維持するためのペースメーカが必要になります。
当院では、速やかで安全なペースメーカ移植術を行うことはもちろんの事ですが、毎週月曜日にペースメーカ外来を設置しており、手術後の管理も遠隔モニタリングを併用しながら定期的に管理させていただきます。
当院で施行可能な検査
・冠動脈CT
・心臓MRI
・心筋シンチグラム
・心エコー
・経食道心エコー
・運動負荷心電図
・ホルター心電図
・携帯心電計
・Tilt Table Test
診療実績
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
入院件数 | 620 | 643 | 625 | 672 |
心臓カテーテル検査 | 404 | 362 | 285 | 275 |
PCI(経皮的冠動脈形成術)件数 | 211 | 182 | 133 | 130 |
PTA(経皮的血管形成術)件数 | 23 | 25 | 21 | 22 |
カテーテルアブレーション件数 | 3 | 8 | 51 | 78 |
ペースメーカ植え込み術及び電池交換術 | 30 | 35 | 25 | 54 |
植え込み型心臓モニター(ICM) | 2 |