概要

『脳神経外科治療に専念して、患者さんが安心して暮らせる地域を目指しています』
私たち川口市立医療センター脳神経外科は脳や脳血管、頭部外傷などの病気に対し、最先端の医療機器を用いカテーテル検査や治療、外科手術・顕微鏡手術を行っています。
どんな困難な手術に対しても、最高水準の治療を目指してお応え致します!脳の事なら安心して我々にお任せください!
脳神経外科部長 古市 眞
脳神経外科の特徴
昨今、患者負担の少ない低侵襲化治療が求められてきています。脳治療の分野でも低侵襲治療が飛躍的に進歩して参りました。当院の脳神経外科では、この時代の最先端の方向性に基づき、脳や体に対する負担を減らす治療を第一選択とする低侵襲治療方針を進めております。脳の低侵襲治療とは脳血管内手術といった開頭しない治療というだけではなく、開頭を要する治療の場合でもなるべく脳に負担をかけない手術法を選択することを目指しています。これにより患者さんはより回復が早く、短い入院期間で早期の社会復帰を目指せます。
当科の特徴は、低侵襲の脳血管内治療を選択することができるだけではありません。われわれは、脳血管内治療では合併症リスクが高い患者さんに対して、選択肢の一つとして開頭手術も推奨しています。つまり、当科は脳血管内治療と顕微鏡などを用いた直達手術の両方が実施可能であり、患者の病状に合わせて適切な治療選択肢を提供する、テーラーメイド医療に取り組んでいます。
5名の常勤医がおり脳神経外科指導医・専門医3名、脳卒中専門医3名、脳神経血管内治療指導医1名、脳神経血管内治療専門医2名、脳卒中の外科技術認定指導医1名、定位機能脳神経外科技術認定医1名など多数の学会資格を有している研修施設です。
さらに当院当科は、2018年4月から日本脳神経血管内治療学会における脳神経血管内治療研修施設に認定されました。当院は、川口市内で唯一認定された施設であり、埼玉県内では8施設だけが認定されています 。
発症8時間以内の急性期脳梗塞に対して積極的に血管内治療による血行再建術を行っています。当院は、2019年10月から日本脳卒中学会より一次脳卒中センター(PrimaryStrokeCenter:PSC)に認定され、24時間365日、脳卒中患者を受け入れ、緊急の精密検査やt-PA静注療法(血栓を溶かすお薬を点滴する脳梗塞の治療方法)、脳外科手術、血管内治療手術に対応可能な体制を敷いております。
脳神経外科が扱う主な病気
脳動脈瘤、脳内出血、急性期脳梗塞、頸動脈狭窄症、脳腫瘍、頭部外傷、水頭症、脳動静脈奇形、頭蓋内主幹動脈狭窄症など
診療内容
1.脳動脈瘤の治療
脳動脈瘤に対する治療は、開頭クリッピング術と、カテーテルによるコイル塞栓術があります。当科は、どちらの治療法も得意としています。未破裂動脈瘤に対して患者さんと相談のうえ、最も適した治療方法を選択しており近年はコイル治療件数が増加しています。
代表症例:脳動脈瘤に対するコイル塞栓術例(ステント併用)
代表症例:大型脳動脈瘤に対するクリッピング術例
2.血栓溶解療法・血行再建術
脳梗塞は突然に半身が麻痺したり、言葉が喋れなくなったり、意識が無くなったりします。血栓溶解薬(t-PA)の静注治療は発症から4.5時間以内にのみ実施可能です。近年 、血栓を回収除去する特殊なカ、血栓を回収除去する特殊なカテーテル(トレボ、ソリティア、ペナンブラ)を用いた治療が可能になりました。この方法では発症から8時間までの急性期のみに治療できる可能性があります。発症から8時間以内の患者さんですぐに治療ができれば、約50%近くの人は、重症な脳梗塞にならずに救うことができる時代になり、当科でも本治療を積極的に行い、急性期脳梗塞の患者さんを助けています。県内でも限られた施設でのみ治療可能であり、当科では2013年から導入しています。当院では2017年に22件でしたが、年ごとに症例数が増えており、2019年は40件と川口市内でもっとも多く治療している施設です。





3.頸動脈ステント留置術
頸部の太い動脈が非常に狭くなったり詰まったりしてしまった場合、血流が不足して脳虚血症状があらわれることがあります。薬物治療に加えて、狭くなった部分に血管内からバルーンやステントを入れて拡げる治療があります。ステント留置術では、皮膚を切開せずに短時間で行えるため、患者さんの負担も軽く、最近の治療機器の目覚ましい進歩により、治療成績が向上しています。頚動脈狭窄や一過性脳虚血発作(短時間だけ麻痺や言語障害を生じるが、その後回復する)があった方は詳しい検査が必要ですのでご紹介ください。
代表症例:左頸部内径動脈の高度狭窄 軽動脈ステントを留置して血流が改善
4.脳腫瘍の集学的治療
脳腫瘍の中でも良性腫瘍の場合は外科的に摘出できれば治癒することが可能です。悪性脳腫瘍の場合には完全摘出は困難ですが、手術によって病理診断を行い、放射線治療や化学療法(テモゾロミドの内服)を行うことで、増大を抑制して有意義な生存期間を延ばすことができます。当院には放射線治療専門医と化学療法専門医がいますので集学的な治療を行うことが可能です。
外来
脳卒中は緊急疾患ですので顔面麻痺、半身麻痺、呂律障害などの神経症状が出た際には直ちに救急車を要請してください(Time is Brain:早く治療を受けるほど重い後遺症を免れる可能性があることからこのように呼ばれています)。
一般外来は原則予約制となっています。病診連携を重視しており総合相談室を通して予約が可能です。木曜日に頭痛専門医による専門外来を行っています。
診療実績 脳神経外科
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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クリッピング術 | 8 | 10 | 9 | 6 | 10 |
脳血管内手術 | 51 | 67 | 76 | 85 | 87 |
脳腫瘍摘出術 | 17 | 16 | 19 | 12 | 16 |
慢性硬膜下血腫手術 | 33 | 43 | 55 | 55 | 48 |
総手術数 | 162 | 191 | 212 | 220 | 226 |
tPA投与件数 | 13 | 15 | 20 | 19 | 39 |